2014年 4月 の投稿一覧

Boeing 777の安全性について

Boeing777はBoeingが誇る300-400人クラスの旅客機で,2014年現在ライバル機種がなく,世界中で飛んでいます。AirbusもA340,A330という300-400人乗りの飛行機のシリーズがありますが,Boeing777に比べると,大きさや燃費の点で勝てない領域が多いため,今のところBoeing777は世界に敵なしと言っても過言ではありません。

Boeing777がすぐれているのは,燃費や航続距離,乗れる旅客数だけではなく,安全性に関してもとても優れています。多くの飛行機は事故によって失われる機体が少なくありません。例えば,現在世界で一番売れている旅客機であるBoeing 737は,現在までに約8000機生産されていますが,そのうち169機は事故により失われています。もちろん,飛行機事故の多くはパイロットミスが原因ですが,機体メーカーの設計が悪かったものも多くあります。

その観点から考えると,Boeing777は非常に事故の少ない機体です。初飛行してから現在まで20年ほど経っていますが,現在までに事故により失われた機体は4機のみです。2013年までは2機しか失われておらず,また事故による犠牲者はゼロでした。奇跡的とも言える安全性です。1200機ほどが生産されています。

ところが,2つの痛ましい事故が起こってしまいました。

  • アシアナ航空214便
  • マレーシア航空370便

前者の事故は,サンフランシスコ国際空港に着陸する際,失敗して機体が大破したものです。いまだ原因はわかっていませんが着陸時の速度が以上に低く,十分な安定性が確保できる速度域ではなかったことがわかっています。

後者の事故は謎が多く,未だブラックボックスを巡ってオーストラリア沖で捜索が行われています。飛行機のブラックボックスはFDRとCVRから構成されており,飛行の状態(速度・高度など)とコックピットの音声の録音が残り,事故後も電池で1ヶ月間の間自分の位置を知らせる装置がついています。これを探して原因を究明しようと,オーストラリアには各国の軍から飛行機が派遣されています。

飛行機の事故は一度起きると多くの命が失われるため,そこから教訓を経てその後の飛行機の設計や運航に役立てるため,徹底的に調査が行われます。そして,究極の安全性を求める果てしない旅が続きます。一刻も早い事故機のブラックボックスの回収が求められています。

MRJの主翼(右)が最終組み立て工場に到着

三菱航空機が開発しているリージョナルジェットであるMRJの飛行試験機の構造組み立てが進んでいます。Flightglobalによれば,下記のように右主翼構造が小牧南工場(最終組み立て工場)に到着したようです。

asset image

Mitsubishi Aircraft (from flightglobal)

写真を見ると,主翼にはJA21MJと書かれています。この番号は機体番号と呼ばれるもので,このような飛行機が管制官から呼ばれる際にはフォネティック・コードが用いられます。この機体が飛んでいる際には,下記のように呼ばれることでしょう(参考:http://ja.wikipedia.org/wiki/NATO%E3%83%95%E3%82%A9%E3%83%8D%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%B3%E3%83%BC%E3%83%89)。

「ジュリエット・アルファ・トゥー・ワン・マイク・ジュリエット」

また,この写真にはウイングレットと呼ばれる翼端デバイスが写っています。手前側が飛行機の後ろ側,奥側が飛行機の前側にあたると思われますが,他の機体のウイングレットに比べて角度が寝ているように見えます。

 

MRJの主翼の部品を作っているのはどこの会社か

MRJの主翼にはフラップ・スラットなどの高揚力装置,それからエルロンなどが装着されているように見えます(http://aircraft.graph.jp/archives/9参照)。MRJの高揚力装置は,公式サイトや報道などから,次のメーカーが製造を担当しているようですが,それらの会社から部品が納入されているようです。

  • AIDC(漢翔航空工業股份有限公司):
  • Nabtesco:
  • UTC Aerospace systems

AIDCでは,2014/2/27に,MRJを開発する三菱航空機に対し,出荷式のようなセレモニーが行われたことが記事になっていました。下記3点が展示されたようです。

  • ベリーフェアリング
  • フラップトラックフェアリング
  • スラット

また,この記事の中には,AIDCが担当するMRJの部品として,下記5点が書いてあります。

  • フラップ
  • エレベーター
  • ラダー
  • エルロン
  • スポイラー
  • ベリーフェアリング

三菱航空機のサイトには,スポイラーの製作は記載されていませんが,AIDCはスポイラーも製作するようです。

http://www.aidc.com.tw/enn/newsshow.asp?newsid=132

aidcmrj1.jpg (1280×857)

(AIDCのサイトより引用)

この赤い布がかかっている大きな部品はベリーフェアリングであり,13mの大きさがあると書かれています。MRJの公式サイトによると,MRJの長さは35.8mなので,13mとなると1/3位上の大きさです。

DSC_0258.JPG (3872×2592)

(AIDCのサイトより引用)

この部品はおそらくスラットと呼ばれる主翼の全部に取り付く高揚力装置であると思われます。鋲でたくさん止めてあるのが見て取れます。

一方,これらの構造部品を動かすアクチュエーターを製造しているのがNabtescoです。岐阜県に工場がある会社です。三菱航空機のサイトには,フライト・コントロールアクチュエーターとだけ書いてあり,どの部分を作っているのかが明確ではありません。

SJACのサイト(http://www.sjac.or.jp/common/pdf/kaihou/201307/20130702.pdf)によると, ラダーアクチュエーター,マルチファンクションスポイラーアクチュエーターが展示されていたと書いてあります。また,それを制御するコンピューターであるアクチュエーター・コントロール・エレクトロニクスも製造しているようです。また,Nabtescoのプレスリリース(http://www.nabtesco.com/news/pdf/080215release.pdf)によると,下記をNabtescoが担当すると記載されています。

  • ラダーアクチュエーター
  • エレベーターアクチュエーター
  • エルロンアクチュエーター
  • スポイラーアクチュエーター
  • グランドスポイラーアクチュエーター
  • アクチュエーターコントローラー

一方,UTC Aerospace systemsが,MRJの主翼に関しては,下記を担当しているようです。

  • フラップアクチュエーター
  • スラットアクチュエーター

(参考:http://repairsearch.utcaerospacesystems.com/vgn-ext-templating-hs/v/index.jsp?vgnextoid=16eaaec96b991110VgnVCM1000007301000aRCRD&hsct=hs_news&ciid=bba8d667ffec6110VgnVCM100000c45a529fRCRD)。UTC aerospace systemsは,以前はHamilton Sandtrandという会社だったのですが,社名を変更しました。

MRJの主翼はたくさんの会社がいろんな部品を作ってなりたっていることがわかります。まとめると,以下のようになります。

部位 メーカー
構造部品 アクチュエーター
主翼本体 三菱重工 なし
フラップ AIDC(台湾) UTC Aerospace systems(アメリカ)
スラット AIDC(台湾) UTC Aerospace systems(アメリカ)
スポイラー AIDC(台湾) Nabtesco(日本)
エルロン AIDC(台湾) Nabtesco(日本)